元外資系マーケッターが語る戦略的マーケティング

元外資系マーケッター金泉勇次のブログ。中小企業、個人事業主、副業の学生や主婦までをサポートするビジネス・マーケティング・アドバイザーです。

その値下げ戦略は本当に正しいのか?

値段が高いと売れないという勘違いがある。

高いものは売れないということは無い。

しかし、100円のものと10000円のものが

同じ数だけ売れることは無い。

もちろん100円のものが多く売れる。

ここで問題なのは、

あるカップラーメンが100円で売っていた

隣の店では、90円で売っていた。

あなたは、間違いなく、隣の店で買うだろう。

しかし、90円で売ることに価値があるのだろうか?

よく考えてほしい。

90円で売ると赤字という場合もある。

来店者数を増やす戦略で

赤字覚悟のプライスを提示する場合もある。

しかし、現在の消費者は昔とは違う。

多くの情報を持ち、

安いセールス品しか買わない。

ではそもそも、90円が安いのか?

このカップラーメンが10円であれば、

あなたは買うだろうか?

ほとんどの人は買わなくなる。

なぜか?

不自然だから、という単純な理由である。

コンビニのおにぎりは、50円になったら売れない

間違いなく、売れなくなる。

100円前後が適切な値段なのである。

安くすれば売れるということでは無い。

顧客の満足感は、「価値 ÷ 価格」である。

ここで極端に安い価格を設定すると

満足感が期待値を大きく上回り、

不良品ではないか、怪しいものでは?

という印象を与える。

また、数名でランチをした際に、

50円のおにぎりを買っていると

少々、恥ずかしい気分になる。

私が最も必要ないと思う感情の

「世間体」というやつである。

これは、プライスリーダーが作った

おにぎりは100円くらいという常識が

その世間体を作っている。

スーパーに行けば、1個50円のおにぎりは

珍しいものでは無い。

コストを考えても、

お米の値段と中身の具と海苔で50円程度、

企業ならば、もっと安く作ることができる。

包装や輸送を考えても、100円は高いと私は思う。

しかし、コンビニのおにぎりは100円という常識が

あるため、100円で売れるという理屈である。

そもそもコンビニのおにぎりが、

50円で販売されていれば、

50円を受け入れているということである。

この話は、他の業種でも同様のことが言える。

コンサルタントが高額な費用を請求するのは、

その価格設定がそうなっているからであり、

時給2000円でも良いのか知れない。

金額を決めるのは先駆者であり、

マーケットリーダーである。

成長期に参入できなかった後発組は、

プライスを変更することはできない。

唯一できることは、

プライスを下げることである。

しかし、価格を下げれば、

自分たちの利益も減ることになる。

自分で自分の首を絞める結果となる。

もしあなたが、無名のコンビニから、

おにぎりの販促依頼を受けたら、

どんな戦略を考えるだろうか?

隣に大手のセブンイレブンやローソンがある。

同じ値段で同じ材料だとしたら、

勝てるわけが無い。

同じ材料で値段を安くすれば、

売れるだろうか?

私は断言する。

絶対に売れない。

1個10円にしても、売れない。

売れないどころか、評判を落とすので、

こんな戦略はやめたほうがよい。

より高価な材料で、値段が同じならば、

初めて、大手コンビニのブランドと同等になれる。

こういう話をすると、

とんでもないものを提案するケースがある

1個1万円のおにぎりを販売するとか、

チョコレートおにぎりなど、

バカバカしいと思うが、

瞬間的には面白いと思う。

しかし、この手の商品は定着することは無く、

奇抜なものだけが注目され、

実質的な売り上げには貢献しない。

結局、日常的に売れる、スタンダードを

手に入れる必要があるわけだ。

それは、毎日使える手ごろな価値観である。

もちろん、新たに商品を作ることは簡単なことでは無い。

可能な限り、既存商品の良いところを

見つける必要がある。

大衆を狙うのではなく、ターゲットを明確にして、

正面攻撃ではなく、側面攻撃やニッチ戦略。

そもそも規模が違う相手と

同じ戦いをすることは間違いである。

そこにあるものは、価格を下げるという

単純なものでは無い。

価格を下げても自滅するだけである。

マーケティングが行うことは奇抜なことでなく、

ターゲットを明確にしたニッチ戦略である。

勝てる可能性はいくつでもある。

金泉勇次